3歳になる、甥っ子のサクヤが亀を飼いたいと言い出した。
妹夫婦が、実家や私の住む区内にマンションを買った。
引越し祝いに犬か、猫飼ってあげようか?と思ったのに、妹がふと言った。
「この子、亀が好きなの。よく動く亀。」
妹は、10年前、結婚してすぐに出来た子供を死産した。
7年かかってやっと出来たサクヤを
それこそ目の中に入れても平気くらいに可愛がる。
お母さんや、親戚は「甘やかしすぎ」と批判的になったりもするけれど
彼女は頑なに「家には家のやり方があるから。」と、
ろくに叱りもせず、サクヤ欲しがる物はできる限り与えようとする。
とにかく、よく動く亀。
私はサクヤにたいしては、ありふれた叔母さんで、
世間一般通りもうメロメロに甥っ子がかわいい。
タカキはそんな私を見ては
「自分の子供、作ればいいのに。」
と言い、必要以上にサクヤに接しようとはしない。
サクヤに限らず、タカキは子供、大人の区別無く、
ほとんどの人間に積極的に親しく接しないのだけど。
仕事柄、表面上の付き合いには長けているから、
その巧妙さに皆騙されている。
タカキは私以外の誰にも関心を示さない。
とにかく、亀。
サクヤに買ってあげる亀ならば、私が手に入る限り、
最高の亀でなくてはならない。
あの人に、亀を売ってもらおう。