日本文化評論序説 第8回

司馬遼太郎「梟の城」 時代小説から歴史小説への転換点 大家への道を切り開いた作品

 司馬遼太郎、昭和35年直木賞受賞のデビュー作である。若い人たちには「梟の城」は、1999年の中井貴一(葛籠重蔵)上川隆也(風間五平)鶴田真由(小萩)葉月里緒奈(木さる)の映画として知られているだろう。

 豊臣秀吉の暗殺を依頼された伊賀忍者葛籠(つづら)重蔵と、葛籠を捕らえることによって忍者から武士にはい上がろうとした抜忍風間五平の争い。葛籠重蔵の命をねらう女忍者小萩(こはぎ)。五平の許婚でありながら重蔵を慕う木さる。小萩の重蔵への愛情を見抜く木さるの最後は痛ましい。命をねらう重蔵に近づくために女の武器を使う小萩のなまめかしさ。争いが終わって幸せをつかんだ二人の描写はくり返し読んでもあたたかい。

 私の司馬遼太郎初体験は「花神」だ。日本の西洋医学の開祖としての大村益次郎の生涯。益二郎の語学力と博識には舌を巻く。西洋医学書を読んだだけで医学技術を身につけていく。その語学力を生かして西洋軍学を学び旧日本陸軍の創設者となった。東京出張の折に靖国神社を見学にいったとき、大鳥居をくぐってすぐ目に入る巨大な銅像に軍神大村益次郎と表記されていることを知って、日本西洋医学の開祖と信じていた私は少なからずショックを受けた。

 以後「胡蝶の夢」など医学史ものに挑戦したが、司馬遼太郎の小説は思わず日本史年表を調べたくなるような大作が多く、歴史教科書か偉人伝を読んでいるような違和感を覚えて私の中での司馬遼太郎ブームは長く続かなかった。

 司馬遼太郎をもう一度手に取ったのは、道南勤医協への固定医師となることが決まった

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日本文化評論序説
2008/12/23




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