『悲鳴』!

 最初の悲鳴は、昼間だった。
 その悲鳴は夢のようだった。その時、わたしは引きずり込まれるように眠かったのだ。
 社宅の団地のどこかで子どもが叱られて泣いているのだろうと思い、ずるずると眠ってしまった。

 次の悲鳴は、夜。9時頃だった。
 「痛いー!! 脚が痛いーーー!!」
 今度ははっきりと聞こえた。
 女のひとの声だと分かって、声が聞こえて来たベランダに駆け寄り、網戸を開けた。
 向かい側の団地の階段で、その女のひとを抱きかかえて車に乗せようとする男のひとの姿が目に入った。
 「脚が痛いー!!」
 女のひとは叫んでいるけれど、歩いていた。

 どきどきして、息を詰めて、飲み込んで、思い出した。
 向かいの建物に、『パニック障害』の奥さんがいるって。前にも何度か救急車が来たって。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 夫のtetsuさんが帰って来た時に、そのことを話した。
 y:「すごい叫び声で、びっくりしたよ。ダンナさんが連れて行ったから、病院に行ったのかな…」
 t:「そうかもね。社宅にパニック障害の人がいるって、聞いたことあるよ」
 y:「そう…」
 
 3回目は、深夜。
 12時過ぎに、それこそ夜を切り裂くような悲鳴が響き渡った。
 「助けてー!! 殺される、殺される! きゃーー!!」
 びっくりして、夫のtetsuさんとわたしは窓に走った。
 向いの3階から聞こえる。
 「殺される、殺される!」
 悲鳴は続いた。
 tetsuさんは電話を持っていた。
 110番通報するつもりで。
 でも、分からなかった。
 事件なのか、発作なのか。
 とにかく、パニック障害の奥さんがいるらしいって聞いてたから、様子を見ていた。
 すぐに同じ建物の部屋にパ、パッと電気が点いて、男の人がふたり、3人と飛び出して来て、3階のそのドアを叩いた。
 「大丈夫ですか?!」
 声は離れた建物のわたしにも聞こえた。
 ドアを叩いたひとは、携帯で電話をした。その声も、夜の闇から聞こえて来た。警察と救急車を呼んでいるようだった。
 わたしはもう涙が出ていた。
 夫のtetsuさんがGパンを履いて様子を聞きに行って、戻って来た。
 「ダンナさんが冷静に押さえてるって。警察と消防も呼んだそうだから、大丈夫だよ」
 わたしは泣いていた。
 悲鳴は絶え間なく聞こえてくる。

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元気なわたしでいたくて
2009/06/10




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