保険屋N氏の静かな死

前回の終わり方が「同業者の訃報が…」だったので、混乱を招くといけないのだが、今回綴るのは「その人」の事ではない。「その人」について書けるとすれば、それはもう少し先の話…人と人の距離には優先順位があるものなのだ。まだ僕がココで話すのは失礼にあたる。もちろん「その人」の死が、今回書くコトの動機にはなっているのだけどね……とココまで書いて「急ぎ保存」したのが先月の末日(とうとう一月に最低2回更新の公約も破ってしまった…)だった。またぞろ書いてる途中に「知人の訃報」を聞き、筆を取り合えず置いたのだ。そして数日躊躇してたら今度はベテランの演劇人がこの世を去り、さらに先日、お世話になった中日新聞の名記者が亡くなった。北村想さんもブログで書いてたけど、ほんに夏はサバイバルでんなぁ。古い親戚に言わせると「引っ張られた」とか言うらしいけど。2週間の間に(大谷直子を含まなくても…)4人でっせ。んでね、このN氏の事も、ブログとの相性が悪いならやめようかとも思ったが、逆に盆前にちゃんと書いておくのも供養かと思い、重い筆をとる事にした。……N氏とは、僕が二十歳過ぎた辺りからの付き合いだった。自分でも親戚だったかと勘違いしそうな「おじさん」は、いわゆる保険屋さん。もしかしたら僕が22歳の時に他界した父親と、別れてすぐの出会いだったらから、N氏には父親の残り香を感じてたのかもしれない。実際、事故処理で会った時など(ま、これこそ職業上だったのだけどね…)気の利いた慰めをもらったり、甘えてると叱咤してくれたりもしていた。その保険屋さんの「N氏」が死んだことを告げられたのは、つい数ヶ月前のことだった。同業を名乗るTさんという若い男性から、それも電話で。早い話、自動車保険の担当者が変更にならざるを得ないので、その挨拶を兼ねての電話だった。電話口のTさんの口調は、感情を抑えた穏やかなモノ言いで、お陰で僕は、十分に驚きながらも事実をちゃんと受け入れる事ができた。進行の早い癌に侵され、余命の宣言も受けていたらしい。何より通夜も告別式も2週間以上前に全部終えているという話。「水臭いぜNさん…」と残念に思いつつも、かといって具体的な”別れの場”を見いだせぬまま、忙しさにかまけていた。そして先日、保険業務を受け継いだ「若いTさん」の訪問を受ける。何のことは無い、年に一度の契約更新のための事務的な顧客周りである。生前のN氏とも、こうした年に1度の(喫茶店での)無駄話で十分交流を図っていた。「コウちゃん(彼は僕をこう呼ぶ…)さぁ、僕なんかとは会わないほうが暮らしが安定してる証だからさぁ」との、お得意のフレーズを思い出す。死神気取りでもなかったろうに……。そして若いTさんは、僕の部屋でとても紳士だった。極めて穏やかに事務的な手続きを進めるTさんをさえぎり、N氏の死にまつわる情報を欲する僕。「そうですか。そう

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永いお別れ_
2009/08/08




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