リキ物語 第10話 タイガーとクルージング

 タイガーとクルージング
 
 船が風だけの力で、スーと走り出す時、本当にうれしくなります。大きすぎて、帆走性能が悪く、パーティーをする時だけ便利な今のヨットでも、エンジンをかけずに、そっと舫いを離し、ワーキングジブに裏風を入れてゆっくりと方向を変え、スーと、ポンツーンを離れて行くのは、大航海時代の船乗りになった気分になりワクワクします。
 初めて自分たちのヨットを手に入れた時、クルージングの最初から、終わりまで、ワクワクドキドキ気持ちイイの連続でした。自分たちのヨットを手に入れたと書くと、とってもカッコいいですが、実は、大学祭に模擬店を出し、あっちこっちから女の子を集めて、女の子に飢えている国立大学の学生から巻き上げた五万円で、琵琶湖の貸しヨット屋から、ぼろぼろの中古艇を買ったのが最初でした。
 ナイトクルージングだと言って大津を出発し、風が全くなくなり、雄琴あたりで眠りこけ、起きたら、芦原の中に閉じ込められていた事もありました。全長5メートルのセンターボードの付いた大きめのディンギーですから、閉じ込められたと言っても、ズブズブと芦原に降りて、押せばしまいです。
 この座礁した時の降りて押すスタイルは、もう少し時代が過ぎて、自分たちで、まともに稼いで買った23フィートのヨットの時代までつづきます。小豆島土庄、23フィートのデイクルザーが2艇、可愛い女の子がいるよ、いやあれは子供だよ、とあっちの海岸にフラフラ、こっちの海岸にフラフラ、一日に7回座礁の記録を作った事があります。最初は、「座礁、みんな降りて押せよ」で済みましたが、そのうち誰も降りなくなりました。
 ヨットは、風を斜め前から受けても前進する事ができます。三角形の帆を持ったヨットでなくとも、大帆船時代のたくさんの横帆を持った船でも、帆の角度を変える事により、風に対して切り登る事が出来ます。なぜこんな事が出来るのか、科学少年たちの間で話題になりました。古荘君が、「それは、ベルヌーイの原理である」と言いました。そして、力の方向をベクトルの矢印で記述しました。「ヨットが風に対して45°の角度で前進できるのは、飛行機が飛ぶのと同じ原理であり、帆に働く揚力が原動力である。」古荘君は航空工学について書いた本を持っていたのです。小学校6年生の他の少年達に、そんな事判るわけがありません。
 彼はこのまま大人になり、今は工学部の教授になりました。
 本当に風に対して斜めに前進できるかどうか試してみようと言う事になり、制作が始まりました。模型とか工作とかは、みんなとっても得意だったのです。すでに、熱気球や、ロケットの実験には成功していました。参考にした写真はニースあたりに浮かぶ豪華ヨットだったようで、全長60cm、真っ白の船体、船底は

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リキ物語
2008/09/05



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