隧道図鑑
昨年、枇杷山トンネルを歩いてからトンネルを「見」て歩くようになった。
横須賀ならではの古い隧道、通称お化けトンネルや、
谷戸をつなぐ小さなトンネルなど、見所は多い。
それまでトンネルを避けていた理由は、単純に風景が見えないからである。
板塀やトタン塀に沿って、曲がりくねった路地を進む。
路地の先には古い鳥居や、突然ひらける断崖や、ツタの絡む玄関がある。
磨り減った石段を上って、上り切ったらまた下りて、いつか見た街にたどり着くまで。
それが谷戸散策、古い地脈をたどる旅。
トンネルは最短距離で行ける代わり、そうした道すがらの景色が楽しめない。
A点からB点へ抜けるだけ。
途中で迷うことすら出来ない。
しかし辺りの風景は別の機会にして、
トンネルだけをじっとみれば、それはそれで異界的である。
M君が言うように、入り口の私と出口の私が同一人物である保証はない。
A点とB点の間に横たわるのは無機質の暗がり。
幽霊もいない代わり、たぶん神もいない、谷戸のアンダーワールド。
元々入り組んだ谷戸である。、
強引に穴でも開けない限りまっすぐ行ける道などありはしない。
そしてあるとき横須賀の谷戸にトンネルが掘削され始めた。
それは枇杷山トンネルより、もっとずっと前の話。
[album: 横須賀隧道図鑑]
(2009.05.20/イチロー記)
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