停留睾丸一般的には、あまり知られていないことなのかもしれません。私も、獣医学の勉強をするまでは、知りませんでした。
ご存じの通り、通常、睾丸は左右2個あり、陰嚢という袋の中に、おさまっているものです。精巣で作られる精子は、体温程度の高温下でも、生存できないので、体外にぶら下げて熱くならないようにしているわけです。
ですが、胎仔時代の睾丸は、お腹の中にあり、その発生起源はメスの卵巣と同じものですから、場所的にも、お腹の真ん中あたり、かつ奥の方の左右にあります。これが、少しずつ足の付け根方向へ移動し、産まれてくるころには、お腹の外の陰嚢の中におさまるわけです。ひとつの受精卵から、少しづつ、少しづつ、分裂を繰り返して、身体が作られていく過程の、オスとメスの別れ道での、変化なわけです。素晴らしい生命の仕組みです。
この移動がうまくいかずに、お腹の中にとどまっていたり、足の付け根にひっかかるように、とどまっているものを、停留睾丸といいますが、問題点としては、ゆくゆく腫瘍化する可能性が高いということです。ヒトにも生じるのですが、ヒトでは、見た目の問題もありますし、お腹の中にある精巣は、機能できないことも重大な問題です。ですので、ヒトでは、精巣の発達が遅れないよう、乳幼児期のうちに手術をして、睾丸を陰嚢内に固定するようです。ホルモン剤で、降りてくるよう促す方法もあるようですが、成功率は20%程度しかないと、記載されているものがありました。
動物の場合は、見た目はあまり関係ありませんし、どうしたって仔をとりたいというケースも少ないですし、もっとも、停留睾丸の素質は遺伝するので、獣医師の立場としては、仔をとることはすすめられないのですが。そして、去勢手術をしていないことにまつわる、不具合も多々ありますので、手術する場合は、そのまま摘出してしまうのが通常です。
この不具合とは、とくにワンちゃんでのことですが、男性ホルモンの影響で生じる成人病がいくつかあります。会陰ヘルニアといって、お尻ほっぺの筋肉が薄くなって裂け目ができ、腸や膀胱などの内臓が入り込んでしまうヘルニアをおこすことがあります。腸が入り込むと、いきんでも便が出ないといったトラブルが生じます。膀胱が入り込んだ場合は、尿が出せなくなるので、気付かないでいると、尿毒症を起こし、致命的な緊急事態になってしまいかねません。
ヒトでも多い前立腺肥大も、男性ホルモンの影響で進行する問題です。膀胱の出口にある前立腺が腫れることで、尿が出づらくなったり、血尿になったりします。ひどく感染を起こすと、膿が溜まり、全身に細菌がまわってしまって、危険なことになることだってあります。
肛門周囲腺腫という、名前の通り、肛門周囲にできる腫瘍
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