

36年間にわたる内戦の中で、政府軍による大規模な虐殺が繰り広げられたグアテマラでは、1996年の内戦終結に際して締結された和平協定において、軍の役割は国境防衛に限定されたはずであった。しかし軍の兵員数削減の一方で、2006年より開始された警察支援という名目での軍による治安維持活動は、麻薬組織など組織犯罪の広がりや、文民警察の限界、汚職や腐敗を前に足場を固めつつある。
2月16日付けの現地のプレンサ・リブレ紙の記事によると、軍に対して国内362の街区や村などから治安維持のための出動要請があげられているという。さらには軍による激しい弾圧にさらされたグアテマラ北部、キチェ県イシル地域でも駐屯地が再開されるという。
一方、2004年まで派遣されていた国連グアテマラ和平検証団の最後の代表であったトム・コニックスは、今年2月8日にグアテマラを訪問した際のインタビューにおいて、こうした軍の展開に懸念を表明している。コニックスは1996年に締結された和平協定の最も重要な成果の一つとして、民主的な社会における軍の機能が定められ、その人員が半分に削減されたことに言及する一方で、現状のグアテマラにおける治安の問題、脆弱な文民警察の問題を指摘している。しかし治安の悪化の中で、軍が市民社会を守るとして、道路に展開することの危険性を指摘し、必要な数の文民警察を育成し、配置することの必要性を訴えている。[1]
こうした中、警察と軍の参加によって行われた農民排除における過剰な暴力に対する反発も強まっている。アルタ・ベラパス県では、2月11日、不法占拠とされた農民が、警察に加えて100名余りの軍部隊に弾圧され、1名の死者が出る事件が起きている。これに対してグアテマラの農民組織は「グアテマラ軍は国境を防衛するかわりに、権利を要求する先住民族のコミュニティを弾圧している...和平協定によって民主社会における軍の役割は国家主権を守ることに限定されたはずであるにもかかわらず、内戦期のように再び弾圧を行っている。それも今は農園主と寡頭支配層を擁護するためにだ」と告発している。[2]
1月末にもペテン県のラグーナ・デル・ティグレ国立公園に侵入しているとされたコミュニティが弾圧を受け、軍のヘリコプターなどからも銃撃される事件がおきている。人権団体は軍の命令に従わなかったとして射殺された者もいると告発している。[3]
今年度には軍事予算の増加、増員なども既に計画されており、麻薬対策の名目で軍による人権侵害が広がらないよう国際社会の目が必要とされている。(2009/2/19 青西靖夫)
[1]Centro de Estudios de Guatemala, ENTREVISTA A TOM KOENIGS, ULTI
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