生田蕗子と健康

職場の近くにあった店が閉店していた。
店と言っても、本当にそれが店だったのかは知らない。
足を踏み入れたことも無い。

その店の自動ドアには「自然食品の店 ×××」と書かれた手書きの模造紙が張られ、一面ガラス張りの壁には、「○月○日 オープン」と書かれたチラシが何枚も、目隠しの如く貼られていた。
チラシの隙間から見える店内には、パイプ椅子が大量に並べられている様子が見えた。

元々、マンションの一階であるその場所にはコンビニがあって、朝の出勤途中で、昼食を買っていくのに非常に重宝していた。
夕方から雨が降った日に、一番安いビニール傘が品切れになっていて、不思議に思いつつもその倍近い値段の傘を買った後、しばらくしてそのコンビニは閉店した。
その後、「健康食品の店」と看板を掲げた店が開店したのは、コンビニ閉店から半年ほど経ってからだったか。
店内改装していたから期待していたのに、ひどく肩透かしを食らった気分だった。
通勤時に、まだ開店前の時間だというのに、大勢の年寄りが店頭に並んでいるのを見て不思議に思った。
職場でこの謎の店が話題に上らないはずもなく、「誰かあの列に並んで様子見てきたら?」という冗談も言われたものの、当然実行する者などいるはずもない。さらに数ヵ月後、その「店」は跡形もなく消えてしまった。
その後しばらくして、また同じような店が同じ場所に開店して……今回の店は多分3店目か4店目であったと記憶している。

「あの中では最後は高い羽毛布団とか売り付けられるんだよ~多分。」などという憶測は聞かれるものの、実際にあの中で何をやっているのか、何があれだけの大勢の年寄りを集められるのか、未だ謎ではある。あんなに怪しそうな店なのに。

今はガラス張りの中には何も無い。ただ傍らに「入居者募集中 ○○不動産」というのぼりがはためいているのみである。
またそのうち、同じような「店」が入るんだろうかと考える。
次こそは、またコンビニが入ってくれることを願いつつ。

生田蕗子
Feb 8, 2004




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