75 国家の誠意

 伊能たちの勾留は12日だった。

 取り調べでは全員が真実を語った。
 警察を馬鹿にしているのかと、激昂する刑事もいた。

「異能力」「ネットに存在する少年の意識体」「カラスの王様」「千代田区を対象とした生物テロ」「多重人格の殺人鬼」など刑事でなくても理解し難いだろう。

 しかし、一つ一つが客観的に裏付けられていく――。

 回収したGB缶は、確かに兵器級の威力があった。

 開発した三上准教授は、その世界では超一流の学者だった。

 事件の前日、自宅の火災で死んでいる。研究所のような造りの建物で、普通ではない激しい燃え方をしていた。遺体も完全に炭化して、一切研究書類らしきものは残っていなかった。

 事件当日、千代田区にカラスが異常集結していたことも、すぐに確かめられた。ジュースの缶を捨てた人間が、数人カラスに突かれて軽傷を負うという事故も起きている。

 二宮は確かに警視庁本庁ビルから飛び降りて死んでいた。
 警戒の厳しい本庁の中を、どうやって屋上まで上ったのだろうと大きな疑問が残った。

 「ネットの意識体」は本人である長野希が、植物状態から5年ぶりに意識を回復したことで、「奇跡譚」としてマスコミにも取り上げられた。
 意識を回復した時間が、希が消滅したと伊能たちが言っている、10月31日午前10時30分だったことも奇妙だった。警察は希のところにも行ったが、こん睡状態の頃の記憶は全く残っていなかった。

「異能力」に関しては、伊能たち全員から能力が消えてしまったため、実証のしようがなかった。

 12日間勾留されたのは、国家としてこの事件をどう扱えばいいのか苦慮したための時間だろう。

 最後の三日間は、容疑者というより賓客のように丁重に扱われ始めた。

 最初は留置場もバラバラにされた5人だったが、最後の三日間は一緒だった。

 釈放の日、年配の看守がきて牢屋のカギを開けた。
 そして、恭しく一礼して「本当に有難うございました」と言った。

 私物を返してもらう時も、やはり年配の係員で、伊能たちに深々とお辞儀をしたのが印象的だった。

「まだ時間がある。皆こっちにきて話そうや」
 伊能たちの取り調べの指揮を執っていた警察幹部が自室の応接間に招いた。

 全員が座ったところで、堂園と名乗るその男がつらそうな表情で
語り始めた。

 鼻も耳も潰れている、いかにも修羅場をかいくぐってきたタイプの刑事だ。
 喋り方も突き放すような感

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2008/07/11




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