74 永遠の90秒

「駄目だ! あの高さじゃ、落ちた瞬間にGB缶が破裂する!」
 伊能も苦痛の表情で叫んだ。

 すでに肉体も精神も限界を超えていた。
 全身の神経や脳が白熱して、溶解していく感じがする。

 それでも伊能は必死で、落ちていく小さな缶を、上空500kmの距離から軍事衛星のカメラで捉え続けた。


 YUKIは歓喜の表情を浮かべて、狂ったように笑っていた。

 突然身体が、意志とは関係なく動き始めた。
 操り人形が踊っているような、ぎくしゃくとした動きだ。

 笑いやんだ。
 いや、顔の半分が笑うのを止めた。

 顔の右半分は、唇を吊り上げて笑うYUKIのままだ。
 しかし左半分は、哀しげだが決意を秘めた男の顔になっていた。
 二宮の顔だ。

 唇の左側だけが動いて、二宮の声で喋った。
「半分なら取り戻すのは簡単だ」

 静かな声だった。
「さあ、一緒に行くんだ」

 二宮の声に、右側のYUKIの顔が恐怖に歪んだ。


 伊能たちは全員が手を繋いだまま、呼吸することも忘れて、伊能が見せる映像を見ていた。

 銀色に輝く缶と重なるように、地上を歩く人々の姿が映り始めた。

 全員が、お互いの絶望を感じた。
 繋いだ手から、絶望までが増幅されて流れ込んでくる。

 落ちる!
 全員が身体を強張らせた瞬間、映像の中を黒い影がよぎった。

 1秒か2秒、映像が途切れた。
 伊能が再度目標を捕捉するまでの時間だ。

 GB缶は地上に触れることなく、空に向かって上昇していた。
 地上に落ちる寸前、カラスの王が舞い降りてきて、獲物を捕えるように缶を掴んだのだ。

 ――まるで鷲だとタケトは思った。カラスの王様じゃなくて、きっと鳥の王様だ。
 なぜか、涙が流れて止まらなかった。

 伊能が時計を見た。
「タケト! 王様に缶を離すように言ってくれ。万全、いやレッドはあの缶に全力を集中しろ!」

「どこに向かって動かすんですか?」
 そう聞きながら、万全の髪が早くも蠢きはじめている。

「上だ! とにかく上へ向って、有り得ないほどのスピードを出せ! イメージを強く持つんだ。あの糞ったれGB缶なんか、一瞬で宇宙までぶっ飛ばしてやるってな」

「で、でも……」

 不安そうな万全を伊能が怒鳴りつけた。
「俺たちの能力

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ココログ小説
2008/07/08




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