72 ラストワンAM10:17
退避行動まであと3分。
伊能たちを逮捕しにきた警官隊と、少しでも時間稼ぎをするために抵抗する、ヤクザたちとの争いはすでに乱闘状態になっていた。
囲みを突破して何人かの警官が伊能たちの近くまで来た。
しかし際どいところで、須賀の部下たちの捨身の抵抗に食い止められていた。
ついに発見数が19個に達していた。
あと1個である。ただし、その1個が数万人を殺す能力を秘めている。
能力を限界以上に使っている伊能の顔は、僅かな時間で一気に年老いたように見える程やつれていた。
その表情や口調に、焦りの色がはっきりしてきた。
「土岐さん、あと3分で退避時間です。皆を連れて急いで避難してください」
土岐はポーカーフェイスを意地でも崩さない。
しかし、咥えたタバコは逆で、唇から力無くぶら下っている。
土岐は疑わしげな眼で伊能を見た。
「お前も一緒だろ?」
「いや、俺はもうちょっとだけ探します。皆は危険ですから地下に避難してください」
「悪いが、俺も同じことを考えていたんだ。ここまできて後に引いたら、一生ギャンブルで目が出ない気がする」
須賀が伊納と土岐の方へ急ぎ足でやってきた。
目の輝きが違う。おそらく希君のほうだと、伊能は思った。
早口で、ちょっと舌足らずな話し方はやはり希だった。
「最後の1個ですが、もしかすると、YUKIが持っているんじゃないかな? YUKIなら誰にも見られずに設置できるし」
伊能はしまったという顔になった。
「そうか! YUKIは二宮の能力も使えるのか!」
土岐が腕組みして、溜息混じりに言った。
「YUKIと二宮は同一人物なんだろ? しかし、俺には二宮が悪人だとはどうしても思えない。というより匂わないんだ……」
「希君、二宮の人格に呼びかけることはできないかな。俺たちに呼びかけるように……おそらく今はYUKIだろうが、心の奥では二宮が眠っているはずだ」
「できるかどうか……でも試してみます」
その頃YUKIは警察機構の中心部にいた。
通称桜田門と呼ばれる、霞が関2丁目にある警視庁本庁舎ビルだ。
二宮の「見られない」能力を最大限に生かし、誰にもとがめだてされずに屋上まで登ることができた。
YUKIは三上の家から、生物兵器用の防護服を一着持ち出していた。散
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