03 白浜温泉の謎|崎の湯(和歌山県白浜町)

 さて、どこから話をしたものか。今回は推理と言うより失敗談のたぐいだろう。つまり資料はよく読め、ということだ。

 この建物は和歌山県の白浜温泉にあった。武田五一の設計、というか考案だ。崎(さき)の湯は白浜温泉でも有名な海に面した豪快な露天風呂。ひょんなことから、どうやら武田が白浜温泉で仕事をしたらしい、と分かった。和歌山のことを調べていたときに、なにかの本の前書きに、武田にこの仕事を頼んだとかいうくだりを発見。すぐに悪いきつねさんに垂れ込んだわけだ。悪いきつねさんは、すぐさま現場調査を実施し、現存はしないが、当時の資料をサルベージした。さすが悪いきつねさんだ。

 資料とは「白浜温泉史」の該当記事と当時の写真である。この写真を見て驚いたわけだ。室生(むろう)寺にそっくりだったから。室生寺は女人高野と呼ばれる古刹(こさつ)。奈良県と三重県の県境に位置する。金堂は図にあるように、ひわだ葺きの優しい屋根で、わたくしの大好きな仏堂のひとつだ。この仏堂に崎の湯の建物がそっくりだったわけだ。これが今回の謎。なぜに和歌山県の温泉が、奈良県の古寺の姿をしているのか?

 どこが似ているのか確かめておこう。

 図にあるように、どちらも斜面に建っていることが共通している。室生寺は、江戸時代に舞台を増築したそうだ。それに合わせて屋根を今のかたちに改造している。舞台の上にさしかけられた庇(ひさし)は、そのときに継ぎ足されたのだろう。この庇が、ちょうど帽子をまぶかに被ったような表情を建物に与えた。顔を伏せながら、こちらをうかがうような感じ。ようするにおもしろくなったのである。

 その特徴を崎の湯は踏襲している。海に面して帽子のつばのような庇をさしかけている。残された写真では側面しか分からないので、正面も似ているかどうかは、正直なところ分からない。しかし、側面を見るかぎりよく似ている。武田が室生寺を念頭において、この建物を考案したことは動かしがたいようにわたしには見える。

 では、なぜに武田は室生寺に似せたのか? どちらも斜面という立地が共通していたからか? でも

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03 白浜温泉の謎
2007/04/20



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