01 仮面の謎|先斗町歌舞練場の蘭陵王(京都市)これはとても興味深い謎である。現場は京都の先斗町歌舞練場(ぽんとちょうかぶれんじょう)。その屋上に大きな舞楽面の飾りが据えられている。瓦製でけっこう大きい。同じものがいくつもある。この舞楽面は「蘭陵王(らんりょうおう)」なのだそうだ。なぜ蘭陵王なのか。
少し説明しておくと、鴨川に面するこの劇場は1927年大林組の設計施行で完成。設計者は大林設計部のホープ・木村得三郎(当時37)。大阪松竹座を完成させた直後のことで、大林組への発注はその実績を買われてのことだろう。そのまま進めば、第2の松竹座が誕生したと思われる。松竹座は道頓堀へ大きなアーチを向けた純洋風建築だ。この劇場がそうならなかったのは、ひとえに設計顧問についた武田五一(当時55)のせいだと思う。
この建物はいたるところに和風モチーフがちりばめられている。武田は古社寺修復を通して和風モチーフの復興を果たした建築家だから、こうしたデザインはお手のものだ。その総仕上げ的モチーフとして、この蘭陵王は屋上で目を剥いているわけだ。
なぜ蘭陵王なのか? 蘭陵王は納曽利(なそり)と並ぶ舞楽の主要演目のひとつ。舞楽は日本芸能の始まりとされているわけだから、歌舞練場の屋上に蘭陵王があることに不思議はない。では、武田たちは芸能の始まりを示すものとしてこれをデザインしたのか?
わたしの考えでは理由はそれだけではない。
よく見てみよう。頭上の小さな動物は龍である。蘭陵王は龍王の化身とも考えられ、雨乞いの舞いとされた。そのしるしの龍である。頭の後ろには翼がある。蘭陵王の仮面には、こうした翼をもつタイプもあるそうだ。飛竜という意味だろうか。蘭陵王は激しい踊りなので、その吊った顎や目玉がくるくる動く。そうした躍動感が、この飾り瓦にはよく表現されている。なかなかすばらしい美術作品だ。おもしろいのは、どことなくイタリア仮面喜劇のコンメディア・デッラルテの道化パンタローネを思わせるところ。和風でありながら洋風に見えるのはどうゆう魔法か。それはさておき、ここで注目してほしいのは舞楽面の両端に控える2個の鼓(つづみ
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