ゴムのユーザ「入力できない入力フォーム」「支払いができないショッピングカート」「どこにあるか見つからないヘルプ」。これは、全て私がテストした実在のウェブサイトです。また、ワープロソフトの“お節介”な機能に閉口している人や、多機能リモコンと悪戦苦闘している人も少なくありません。なぜ、いつまで経ってもインターフェイスは「使用可能」にならないのでしょうか?
失敗の方程式インターフェイスが「使用不可能」になってしまう原因の1つとして「ユーザ定義の失敗」が挙げられます。皆さんは『コンバーチブルのバンでオフロード仕様』のクルマと聞くとどう思いますか? 1台で全てのユーザニーズに応えようとすれば、そんなデザインになってしまうかもしれません。もちろん、そんな車は存在しないし、存在したとしても誰も買わないでしょう。全てのユーザを対象にインターフェイスをデザインするというのは同様の間違いを犯していると言えます。
では「想定ユーザ」を決めれば事足りるのでしょうか。例えば『流行と自分らしさの調和を大切にする大人のユーザ』という定義をしたとします。しかし、これでは設計チームメンバーが自分勝手なユーザ像を思い描くことが出来てしまうので、何も定義していないのと同じなのです。このようなユーザ定義を、アラン・クーパーは「ゴムのユーザ」と揶揄しています。設計者の都合に合わせて変幻自在に形を変える“ゴム製”のユーザという意味です。
実際のプロジェクトでも、初回ミーティングで私が「想定ユーザ」を尋ねると、しばらく戸惑いを見せた後に「全てのお客様」と真顔で返答する設計チームは少なくありません。しかし、何も制約条件がなければ、無数のユーザ像を作り出すことができてしまいます。
プロジェクト開始当初は、設計チームは時間もエネルギーも十分に持っています。より優れたユーザ体験を提供するために、メンバーは新しい機能やインターフェイスの改善案について様々なアイデアを出し合います。ところが、どんなに素晴らしいアイデアが出されても、設計チームの誰かが、たった1人の「反対する」ユーザ像を思い付いてしまうと、そのアイデアはお蔵入りです。時が経つとともに、創造的な情熱は感情的な泥仕合の様相を呈してきます。
このような不毛な議論を続けているうちに、設計チームには危機が訪れます。「納期」が迫ってくるのです。そうすると、今度は“声の大きい”メンバーが主導して、今のインターフェイスでも“なんとか”使ってくれそうなユーザ像を作り上げます。崖っぷちに立たされ、また不毛な議論に辟易していた他のメンバーには、もはや反論の気力はありません。それまで自分が主張してきたユーザの形を少し変えて、その案に賛成します。この
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