カーナビに癒されたい一時期流行った「癒し系」という言葉も、最近使われることが少なくなった。その所為か、僕の個人的な生活も、人を癒し、人に癒されることが少なくなった。
癒しと言えば、若い女か、果てまた旅の青空か。しかしモテない、金もない自分とって、癒しと言えば手元の携帯電話で、せいぜい持ち株の評価損を確認するぐらか。
ああ、なんというむなしい生活……。しかし、いじけていても仕方がない。そこで僕の提案だが、カーナビに癒されたい、カーナビの世界に入りこみたい、そんな夢をかなえてくれる人(企業)が現れてくれないだろうか。
カーナビの中を自由に歩いてみたいのだ。何も知らない、まだ見たこともないビル群の中を自由に歩いてみたい……。もちろん、そこには話しかけてくれる人もおらず、風も感じず、音もしないだろうが、ただ想像するだけで美しい、麗しい街の景色が現れてくるような気がしてならないのだ。ただ想像するだけで無限の世界が広がるような気がしてならないのだ。かつて子供の頃、ゲームボーイのRPGを楽しんだ時のように。
これでも昔は富士山の上空を自由に周航した。アメリカのグランドキャニオン、中国の天安門広場を見下ろしたこともあった。実際にではなく、もちろん、フライトシミュレーターを使ってだ。それでもなんと癒されたことか……。今でも時々遊ぶことがある。空の青、海の青の横切って、雲の白さが駆け抜けて行く。そのリアリティの面白さよ。あの程度のリアリティでいい、カーナビの中に入って自由に街を歩いて見たい。
夏の終わり、九月の平凡な夜の一時間を、こんな突拍子もない妄想で過ごす、今日この頃であった。
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