インフルエンザウイルス ようやく収束に向かってきたインフルエンザですが、今年は流行の始まりが遅かったため、A香港型、Aソ連型、B型の3型がほぼ同時に流行し、2回3回とインフルエンザに罹った子どもたちもいました。インフルエンザで多くのヒトが辛い思いをしているなかで、タミフルと異常行動の偏ったマスコミ報道や厚生労働省の朝令暮改の声明は、子どもや保護者を不安にさせ医療現場を混乱させただけでした。
私は年に数回、急患センターに出ますが、昨年まではインフルエンザは早く検査をしてタミフルを処方してほしいという保護者の方が多かったのですが、今年は「タミフルを飲みますかそれとも飲まずに経過をみますか」と聞いただけで「テレビであれだけ問題になっているのにまだタミフルを飲ませるつもりか」と憤慨される保護者もいました。幸い私のクリニックでは保護者のみなさんは冷静に話を聞いてくれました。そして不安をあおるだけのテレビ報道に疑問を持たれているかたも多かったようです。
ヒトに感染するインフルエンザウイルスには特徴があって、気管支や肺などの気道の細胞にしか感染しません。なぜならインフルエンザウイルスが増殖するためにはヒトの気道の細胞がつくるたんぱく質分解酵素が不可欠だからです。しかし気道の細胞にしか感染しないのにどうして異常行動、熱性けいれん、脳炎などの神経症状がでるのでしょうか。インフルエンザ脳症では脳の腫れ、いわゆる脳浮腫が著明です。最近の研究でこの脳浮腫が脂肪代謝の異常と関係があり、インフルエンザによる高熱で代謝を司るある酵素の働きが極端に低下して、その結果として脳浮腫になるということが明らかになりました。そしてその熱で働きが低下する酵素の遺伝子変異も明らかになりました。この遺伝子変異をもつ子どもは脳症になりやすいわけです。最初からこの遺伝子変異を調べてわかっていれば予防もできるわけです。もちろんインフルエンザ脳症がこの酵素の異常だけで起こるわけではなく、他の代謝異常も関係していると考えられています。
このことからもインフルエンザの症状悪化には個人の遺伝子レベルでの違いが関係していることが予想できます。ゆえに一律にインフルエンザは休んでいれば治るとは言ってはいけません。
最後に、タミフルを飲んだ後の異常行動ばかりを調べても、タミフルとの因果関係は解明できないでしょう。もともとインフルエンザ自体が異常行動を引き起こすからです。タミフルを飲まないヒトの異常行動を併せて調べれば少しは因果関係を論じることができるでしょう。しかしそれは症状からみた推論の域を出ません。やはり最後は薬理学、生化学、免疫学そして遺伝子レベルでの基礎研究の結果を待つしかないと思います。それには異常行動をおこした患者さん自体の遺伝子のレベルまでの研究が必要になります。患者さんの研究に対する協力
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