『赤いダイヤ (上)(下)』 梶山 季之 -集英社文庫 1994年

 これは面白かった、傑作長編経済小説。スポニチの連載小説(1961年)の文庫版。
 「赤いダイヤ」は小豆(先物取引)のこと。昭和29~33年にかけて、小豆は、産地北海道の冷害凶作により相場が高騰し、投機の対象となった。一攫千金を夢見て、「パチンコ店主」、「小唄の師匠さん」といった、にわか投機家まで現れる過熱ぶりだった。
 小説は、大手買い筋である「森玄」こと森玄一郎と、相場の神様の異名をとる「松辰」こと松崎辰治の売り崩しという対決を軸に展開する。「ない品は高い」という信念を持ち、買い進める森玄と、「凶作に買いなし」を実践し、売りまくる松辰。
 しかし戦いはフェアではなかった。松辰は売り大手であるとともに、穀物取引所の理事長をつとめていた。その職を利用し、証拠金の増額や、建て玉制限、北海道産小豆の代用小豆を認める臨時措置など、買い手に不利な条件を次々に提示する。森玄にとっては、単にカネのためでなく、そうした松辰を負かし、理事長から引き下ろすこと、そして凶作に苦しむ産地農家のために、相場を高騰させることが目的となっていった。
 とはいえ、実は主人公は別にいて、戦後の復興期に蠢いていたブローカーの一人、木塚という若い男。彼は事業に失敗し、借金を抱え、自殺しかけたところを森玄に助けられる。そして「輸出振興外貨」なるカードのブローカーという、新手の事業を拡大していくが、彼本人も「赤いダイヤ」の魅惑に取り付かれていくのであった。カネ儲けには抜け目がなく図々しいが、変に純情・律儀なこの男が、小説全体にユーモアを与えている。

2008/10/18




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