春の花束

朝の散歩。春分の日を過ぎ、好天の水色の空に日は既に高い。高みから南を望むと、樹間にトラピストの鐘楼があり、その先に町の教会が見える。城の上には赤いノルマンディーの旗が翻る。この眺望を胸に収めておこう。

歩いていると鳥のさえずりが聞こえる。ヒーヨヒーヨ或いはチチヨチチヨなどと啼き交わす声からは、少なくとも5つか6つの鳥が啼いていると思われる。最近はこれに啄木鳥の幹をつつく音が混じるようになった。あとは農作業を始めた遠くのトラクターの音が聞こえるばかり。

大洋に洗われ陸に上がって間もない清浄な空気には、いつしか芽吹いた木々の発する香りが混じるようになり、道沿いには多くの春の花が咲きだした。

春に最初に目にするのはプリムラ、あるいはイングリッシュ・プリムローズという野生の桜草。やや緑を帯びた非常に淡い黄色の花で、ここの人がそれをプリマベーラというのを聞き、ボッティチェルリの「春」の絵を思い出して意表をつかれたことがある。当初はさまでと思わなかったが、いつしか楚々としたこの桜草を待ち望むようになっていた。

今はこの桜草が盛りとなっている。それが株となって咲くさまは、春が花束の贈り物を土手のあちこちに置いたようである。机上にも桜草を一輪飾り、仕事にかかる。

Mar 23, 2009




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