土居健郎逝く・『甘えの構造』

 1971(昭和46)年に出版された『甘えの構造』は社会というものに目を向け始めた大学生小生には極めて示唆に富む著書であった。自らのアイデンティティを探る過程で、まずは日本人とはとの問いに、漠然とルース・ベネディクトの『菊と刀』などを読んだが然したる示唆も受け止められなかったが、まさに自らの思考や態度を言い表したような考察に、大げさながら衝撃を受けた。これを起点に比較文化論の面白さと説得性に魅かれ、やがては認知心理学という領域や、日本の古典文学や歴史への導きとなった'(・・・・「わかる」とは分かる、判る、解る・・・など書く)。なお、同時期に山本七兵が書いたとされる「日本人とユダヤ人」(書籍の著者名はイザヤ・ベンダサン)もベストセラーになっていた。高度成長期の中で、がむしゃらの中で、冷静に自らを受け止めようとした日本人の行動の表れかもしれない。

 土居さんはこの他に『精神医学と精神分析』や『「甘え」雑考』、『裏と表』なども出筆されており、当時一通りは目を通した(やや専門的で難解な面もあり腑に落ちないて点も・・・理解できない点も多々あった)。

 弘文堂から出版され紙のハードケースに入っていた記憶がある。訃報に接し、あらためて読んでみようと書棚を探したが残念ながら一切見当たらない。サラリーマン生活で転勤の折々に書籍の「総量規制」に伴い処分してしまったのか。土居さんの示唆もあって、その後吉野裕子さんや河合隼雄さんの著書と出会うことになったのは間違いないことで、細かな論旨ではなく全体の主張が衝撃として方向を示してくれたようにも思える。とはいえ、もう一度探してみて、なければ早速古本屋巡りをして、小生の視座の再確認のためにもう一度読み直してみたい。

 

2009/07/06




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