『皇太后宮大夫俊成』
”世の中よ道こそなけれ思ひ入る
山の奥にも鹿ぞ鳴くなる”
(千載集・雑中)
「この世は、遁れたいと思ってもどこにも道は無いことだ。 思い悩んだ末に心を決めて
世を捨てて踏み入った山の奥にも、妻恋う鹿が悲しげに鳴いているようだ」
逡巡の末にやっと遁世の決意をして入った山中、然しそこにも哀怨極まりない鹿の鳴声が
ある。 余韻嫋々の寂寥の中で、出家しきれぬ自分を見出して断念するが、戻っていく俗世
の前途に曙光が見出せるわけではなく、どこにも行き場のない深い嘆息、述懐歌の典型である。
俊成二十七歳の時