RobbinⅡ-レイン計画- エピローグ(1)

「良子がイスタンブールにやって来たことは、イスタンブール市警の
情報提供者に教えられて知っていました。彼女の住んでいたあの
スワディエのアパートには、偶然でしたが五階にムスタファという我
々の仲間が住んでいたんです。ムスタファは元イスタンブール市警
の本部長だった男で、在任中からかなり悪い評判がある奴でした
が、裏情報にも詳しくて色々と利用価値があったので、定期的に会
ったりしていました。
 私は前の日の夜から彼の所にいて、翌日の朝の十時にムスタフ
ァがカプジュを呼んで外に買い物にやらせた隙に、近くに潜んでい
た美雪を合図して招き入れ、良子の所に向かわせて彼女にドアを
開かせたんです。相手が私では、いきなり訪れても恐らく内部には
入れてくれなかったろうし、その点日本人の女なら、良子が油断す
るだろうと思ったんです。結果は案の定でした。そしてその後に私
が向かい、美雪が内側からドアを開けて私を招き入れました。良子
はさすがにビックリしていました。
 当然でしょうね。まさかこの私が、突然に自分の自宅にやって来る
とは思ってもみなかったでしょうから。美雪は川田さんの知り合いで
通訳をしている人間ということにして、急に一両日中に必要になった
金があって借りる目処が付かないので、考えあぐねた結果、悪いと
は思ったが川田さんの善意に甘えようと決心してここにやって来た、
という設定にしてありました。良子は美雪の真に迫った演技に騙され
て、家にあった現金を彼女に貸してやったところでした」

 酒井の脳裏に、あの時の記憶が鮮明によみがえって来た。帰って
くれ、貴方とは二度と会いたくない、とけんもほろろな態度の良子に、
酒井はカッと頭に血が昇り、言葉にならない言葉を発しながら衝動的
に彼女に飛び掛かると、両手でその首を締めつけたのだ。女の冷酷
さと裏切られた現実が脳裏を駆け巡る中で、彼は泣きながら良子の
首を思いきり締め続けていた。
 もはやもう後戻りなど出来なくなっていた。良子の身体が次第に力
を失い、その場に足元から崩れるように倒れていき、ついには息絶え
ても彼の両手はまだ良子の首を力一杯に締め続けていたのだ。
「死んでるわよ、もう……」
 その美雪の言葉で、思わず酒井がハッと我に返って手を放した時は、
すでに手遅れだった。彼は自分のその手で、良子を絞殺してしまって
いたのだ。自分がしでかした事に呆然と立ち尽くしている酒井を尻目

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小説
2008/12/26




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