邂逅

朝から建物の階下ではひどい音がしていて、どうやら1階の空き家工事が始まったら

しかった。あまりにものすごい音があたりに響き渡っているので何事かと階段の踊り

場に出て見下ろせば、いかにも粗野な感じの丸太のような男が3人、大きなトラックの

荷台に上から家財道具を放り込んでいるのだった。これじゃあ、ひどい音がするわけ

だ。外の物音にイラつきながらギターの練習をしていた息子に、「このぶんだととうぶ

ん終わりそうにないよ」と言う。

1階の部屋のドアの横に『空き家工事を始めるにつき、何かと御迷惑をおかけします

が工事は細心の注意を払って行いますのでご了承ください』という貼り紙をみつけた

のは数日前だ。そこには80過ぎの花好きのおばあちゃんが住んでいたが、年々夏ご

とに弱って痩せ細り、いつしか医者通いが始まり、そのうち私よりひと世代上くらいの

娘が夜泊まり込みで世話をしにやってくるようになり、昼間はデイケアの車が迎えに

来ているのをよく見かけたが、そのうち姿を全然見なくなった。身体の衰えばかりじゃ

なく痴呆もだいぶ進んできたと聞いていたから、たぶん病院に入院したのか施設にで

も入ったのだろうと思っていたけど、今年になって今度は息子さんがやってきて、庭で

おばあちゃんの植木鉢をかたずけていたので、いよいよかと思っていた。おばあちゃ

んはお亡くなりになってしまったのか、それとももうここに帰ってくる見込みがなくなっ

たので家族が部屋を引き払ったのか、定かではない。ただ、それほどつきあいはなか

ったにせよ、確かにそこにいたはずの1人の人間の痕跡が、こんなにも乱暴に跡形も

なく壊され消されていくのを見るのはしのびなかった。

今年はひとつの時代の終焉とも思えるスターの訃報が相次いでいるけれど、またひと

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ある日のこと
2009/07/03



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