相沢商店一口咄

困ったことになった。
狭い店内に、二人きりである。
しかも、密着している。
綺麗な女性と、二人っきりで、密着している。
こう書くと、とてもオイシイ状況に思えるから不思議だ。
いや、ある意味オイシイのかもしれないが、実はそれ程単純な事態ではないんだ。

やや寒い冬の夜。
吐く息が白くなるぐらいには、寒い日。
事の起こりは、閉店間際の客。
ここは小さなコンビニみたいな店で、相沢商店という。
店長とバイト三人の、計四人でシフトを組んで、営業している。
店の規模も、コンビニと同じぐらいか、やや大きい程度。
違うのは、品揃えの差と、24時間営業ではないという点。
もちろん、フランチャイズでもない。
本来、町の小さな商店だったのを、コンビニ風に改装した物件だ。
店長は、代々この商店を経営してきた家の人間で、まだ若い女性。
先代の店長が別事業に乗り出すことになって、代わりに娘さんがここを任された。
大学を出て一般企業に勤めていたらしいが、素直に退職して、店長に納まったと聞いている。
すらりと背が高く、どちらかと言うと美人の部類。
少しぶっきらぼうだけど、指示は的確だし、サバサバして気が利くいい店長だ。
これだけ小さな商店で、バイトを三人雇えると言うのは凄い。
コンビニより、やや時給も高い。
それだけ利益が上がっていると言うことだ。
この不況下なのに。
駅からも住宅街からも近く、立地条件がいいにせよ、今の店長になって売り上げが伸びたというから、彼女の経営手腕というか努力は一目置くべきだと思う。
確かに、日中は客足の途絶えることがない。
僕らはいつだって、安心して働いていられる。
そんな店だった。

店長のシフトは早朝で、お昼前にバイトと交代する。
僕は夕方から夜のシフトに入っていて、シフト時間が変わることはない。
これは、店長の方針だからだ。
何でも、時間が変わるローテーションシフト体勢だと、リズムが狂って効率が下がるんだそうだ。
マンネリズムとどちらが問題か比較して、効率の良い方を採用したのだと、以前聞いたことがある。
そして、店長は閉店間際にやって来て、店じまいを自らするのだ。
ここでバイトをするようになって結構経っているので、ある程度は任せてもらえるのがちょっと嬉しい。

この日。
いつも通り店じまいを始めていた店内に、一人の男性客がやって来た。
閉じかけたシャッターをくぐって。
時間ぎりぎりにやってくる客など珍しくもないので、そのまま店内を巡る

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2010/02/08



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