代表訴訟散見

取締役の責任を追及する訴訟は損害賠償請求に限らない。
明治44年,昭和13年,25年の改正では,取締役の責任の明確化,厳格化ことに弁済と賠償の責任が唱われたが,損害賠償責任に関する改正であった。しかし母法の米法は,代表訴訟を損害賠償に限定していない。会社の利益になることなら,取締役に一定の作為を求めることだってできる。いくつか判例もある。米国では株主代表訴訟によって生じる利益が金銭的なものでも非金銭的なものでも,「実質的利益」と評価されれば,請求の対象になるし弁護士報酬も認められる。たとえば,株式が違法に発行されたことを理由とする無効確認請求,会社財産の浪費を防ぐための「会社内の治療」(連邦最高裁)により会社に実質的利益をもたらす和解,その他会社内の改革・内部手続・ガイドラインの新設,会社にリスクの高い株式買い入れ阻止など。日本では真正な登記名義の回復請求,大阪高判昭54.10.30。三菱自動車の「コンプライアンス基金」によって支払われた和解金により拡充される法令遵守体制(注記参照)も新たな手続の請求であり,会社に実質的な利益をもたらすものとして代表訴訟の対象になる。
 株主代表訴訟によって責任を追及されるべき取締役の責任は,266条の弁済・賠償の責任と280条の13の資本充実責任に限られるという説もあったが,今ではそのような狭い責任ではなく,善管注意義務違反,忠実義務違反のように取締役は委任契約に基づいて会社に負う契約上の責任をも指すと解されている。
 3月10日,最高裁第3小法廷は「会社が取締役の責任追及を懈怠するおそれがあるのは,取締役の地位に基づく責任が追及される場合に限られる。」「266条1項3号は,取締役が会社を代表して他の取締役に金銭を貸し付け,その弁済がなされないときは,会社を代表した取締役が会社に対し連帯して責任を負うことを定めており,会社を代表した取締役の責任より重いともいうべき貸し付けを受けた取締役の取引上の債務についての責任も,267条1項の取締役の責任に含まれる,借りた方も貸した方と同じ責任を負うのは当然である。取締役所有名義の土地につき,真正な所有者である会社への所有権移転登記を求めることは取締役の地位に基づく責任を追及するものでも、会社との取引の責任を追及するものでもないから,代表訴訟に馴染まないが,会社と取締役の土地借用契約の終了を原因とする真正な登記名義の回復を求める点は,取締役の会社に対する取引債務の責任を追及するものであるから,適法な訴えである。」として原審に差し戻した。
取締役に善管注意義務があることを考えれば,会社との取引に何らかの責任を負うことは当然のことと思われるが,果たして新しい判例であり紹介に値すると評価する(金融商事判例1315号)程のことであろうか。

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May 8, 2009




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