取締役会議事録の閲覧謄写 会社法371条1項は取締役会設置会社は取締役会議事録の本店設置を義務づけ,2項は株主に営業時間内での閲覧謄写請求権を認めている(旧法260条の4のような裁判所の許可は要件とされていない)。同条3項は,監査役設置会社等の取締役会議事録の閲覧謄写は「営業時間内いつでも」ではなく,「裁判所の許可を得て」できるとし,同条4項は,債権者が役員又は執行役の責任を追及するため必要があるとき,裁判所の許可を得て議事録の閲覧謄写を請求する権利を認めている。ただし,裁判所はその会社,親会社,子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めれば許可することができないとしている(同条6項)。
さて,株主に情報収集目的という個人的利益を計る目的があった場合,会社は取締役会議事録の閲覧謄写を拒否できるか。株主が閲覧謄写するのは,株主の権利行使のために会社又は取締役個人に何らかの請求をする場合が多いであろうが,必ずしもそれが最初からはっきりしないこともある。何の目的で使うのか,いちいち説明し会社の了解を求めなければならないようでは,閲覧謄写請求権も無に帰しかねない。
会社に著しい損害を及ぼすかどうか,裁判所が実際に議事録を見てみないとわからない。
見てから判断するという事例はなかったが,昨年12月26日の佐賀地裁の決定がこのテーマに取り組んだ。M&Aの決議をした地方銀行取締役会議事録についてである。事が機密事項だけに,会社は神経をとがらさざるを得ない。一方,取締役が適正に議論し職務を行ったか,株主としても関心を持たざるを得ない。株主が会社に質問したとしても,会社は機密事項を容易に明かさない。やむえず株主は裁判所に取締役会議事録の謄写の許可を申請した。決定の要旨はつぎのとおりだ。
①「権利行使の対象となり得,又は権利行使の要否を検討するに値する特定事実の関係が存在し,取締役会議事録の閲覧謄写の結果によっては,権利行使できると想定することができる場合であって,かつ,当該権利行使に関係のない取締役会議事録の閲覧謄写を求めているということができないときであれば,必要性の要件を肯定するべきである」,
②「もっとも,株主としての権利行使に藉口した請求であり,実質は株主の権利行使であると認められない場合については,必要性の要件が否定される」と。
閲覧請求した株主は普通の株主ではない。当の銀行の依頼でM&Aに関する情報を提供していた経営コンサルタントである。M&A成立後に複数回にわたり銀行に質問状を出すなど,不可解な行動をとった。そこで,裁判所は単に権利行使のため閲覧請求するという理由では足りず,①のような要件が必要だ,②のような場合はその必要性がない,として株主権利行使目的と情報収集のどちらのウエイトが大きいか
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