会計帳簿の閲覧謄写会計帳簿(会社法432条)とは,会社計算規則4条の書類をいう。計算書類(法435条)とは,規則91条の各事業年度の貸借対照表,損益計算書,付属明細書等の計算書類をいう。具体的にどのような書類をいうかは,あとで判例を引用しながら説明させていただくとして,株主は会計帳簿を閲覧・謄写請求できるが,難しい問題があった。
旧商法293条の6によれば,100分の3以上の議決権を持つ株主は,会計帳簿の閲覧謄写を請求できた。尤も,株主が会社と競業する者であったり,会計帳簿の閲覧謄写により利益を得る目的で他人に通報するために閲覧謄写するのであれば,取締役は請求を拒否できた。(293条の7)親会社の株主も同じ条件で子会社の会計帳簿の閲覧謄写請求ができた。(293条の8)
たとえば,競業する意図は,競業者である事実で足りるか,それとも競業に利用する意図を持っていることも要するか,という問題である。主観的意図まで立証しなければならないとすると,閲覧謄写請求を拒否することは困難になる。単に業種が同じでも,取扱商品が違うときは,主観的な競業意図はないことになる。もし取扱商品が同じなら,競業意図は推認されるだろうか。内心を立証するのは不可能に近いから,その場合は競業意図は推認して構わないだろう。同じ商品を扱っている事実のみで競業者と認定されてよい。次第に細かな話にならざるを得ない。今は競業の意図はなくても,将来の競業の意図まで考慮されるのか。今年1月15日,最高裁第1小法廷決定は,請求時の意図がどうであれ,将来競業に利用される危険性は否定できないからことを理由に閲覧謄写を拒めるといい,主観的要件不要説を採った。随分と思い切りのいい判断だ。それならば,利益を得て他人に通報するためという目的(会社法433条2項四)も簡単に認められはしないか。せめて利益目的であることを具体的に立証しないと,何でも利益目的での請求いわれて閲覧謄写請求は拒絶されるおそれがある。今は利益目的が認定できなくても,将来利益を得る虞があるなどと言われたら,株主はどう反論すればよいのだろう。将来の目的まで想像されて拒絶するのが正しいのかどうか。利益を得る虞を,株主の経歴,閲覧請求の必要性,他人に通報して利益を得る以外に活用の方法を知らない株主であることなど,間接事実を具体的に主張し,株主はそれに反論して否定すればよい,という構図になるのではないか。
さて,次は閲覧謄写請求する書類の特定の問題である。
改正会社法433条1項は,100分の3以上の議決権を持つ株主は,会計帳簿またはこれに関する資料が書面で作成されているときは,請求の理由を示して,その書面の閲覧又は謄写を請求することができるという。旧商法293条の6にも同様の規定があり,会計帳簿には資産及び負債を記載することになって
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